空間が歪む。 「ここかなぁ?」 と、そこから出てきたのはアレンだった。 「ロードお姉ちゃんの扉使わせてっもらったのはいいけど…、いっつも場所が違うしなぁ……」 アレンはヒラリと扉から舞い降りる。 そこはいかにも廃墟といった感じで、好きこのんで近づく人間はいそうもない。 「ここがマテール」 そう、千年公から言い渡された"お仕事"はここであるものを探してきて欲しいということ。 「千年公が言ってたのはどこにあるんだろう?」 その"あるもの"。 「イノセンス」 それは神の使いの証、イノセンス。 ドォッ………ン その時、廃墟の中央から爆音が聞こえた。 「誰か戦っているのかな?」 よく見ると、そこからは煙が上がっていた。 「早くしないと誰かに取られちゃうかも…」 誰か、なんてそんな人間一種類しか知らないけれど。 左腕を見る。 今は服と手袋に隠されて見えはしないけれど。 ばれない…よね? そう決心を付けて中央部へと急ぐことにした。 中央部では予想通り戦闘が起こっていた。 「ちっ!」 そこには黒ずくめの青年が一人アクマと戦っていた。 周りには、その仲間だろうか、既に事切れた人間が無造作に倒れていた。 アクマは戦闘が楽しいのか、不愉快な笑いをたたえながら斬りかかってくる。 「くそっ…!」 状況は思わしくない。 それでも青年は吐き捨てる様に呟くと、所持していた黒い刀らしきものが光った。 そして、その刀からまるで生き物の様なモノがアクマへと飛びかかっていく。 形成は逆転した様に見えた。 「やっぱり戦ってましたね」 アレンは物陰からのぞき見るとそっと溜息を吐いた。 左目は何かを捉えるかの様に変形している。 右目とは違う。 アクマを捉えることの出来るモノ。 「どうやってイノセンスを取ろうかな」 そう、今の状況ははっきり言ってあまり宜しくない。 出来るならさっさと取るモノ取ったら帰ろうと思ってたのになぁ。 きっとロードお姉ちゃんだったら、 「そんなの全部殺して奪えばいいんだよぉ〜」 とかなんとか言うんだろうけど。 いや、言うだけじゃなくてまず実行するだろうけど…。 「僕のやり方でいくしかないよね」 さすがにあのロードの様なやり方は出来る気がしない。 自分の力じゃまず無理だろうし…。 「取りあえずあのお兄さんをどうにかしなくちゃなぁ」 その時だった。 「誰だっ!」 気配に気付いた青年がアレンがいる建物へと振り返った。 うそっ?!僕ちゃんと気配消してたよ?! これにはアレンも驚いた。 いくらまだ小さいといってもノアで育ったのだ。 気配の消し方くらい知らなくてはあの家で生活などしていけはしない。 そうこう思っている内に、青年が段々とこちらへと近づいてきた。 「もう出て行くしかないよね」 アレンは意を決して建物の外へと舞い降りた。 ギィギィ 歯車は錆音たてて動き出す。
さぁ、そろそろアレンと例の彼らの接触が近づいて来ましたっ!