「こんばんわ」

アレンは建物からヒラリと顔を出す。

一応挨拶だけは社交辞令でしておく。

すると青年は如何にも不機嫌な感じで睨み付けた。

「誰だ、テメェは」

「こういう時は先に名乗るべきじゃありませんか?まぁいいですけど」

「ノアか…?」

その言葉にアレンはニッコリと笑って返す。

「僕はその質問には答えません」

「あぁ?」

「あからさまに殺意を向けてくる人に対して素直に名乗るなんて馬鹿なマネすると思いますか?」

アレンの小馬鹿にした様な態度が気に障ったのか青年は今にも斬りかかってきそうになっていた。

「まぁまぁ、そんなに怒らないで下さい」

あまりにもわかりやすい態度に少々笑えてくる。

短気な人だなぁ。

「テメェ何者だ」

「………う〜ん、まぁ冗談はこれ位にして一応名乗っておきますか」

そう言うとアレンは一歩足を踏み出した。

「あなた方がご存じの通り、僕はノアの一員です。以後お見知りおきを」

一見すれば優雅なその仕草も青年からすれば勘に障る以外の何者でもない。

ザァ

その時雲間から隠れていた月が2人を照らした。

今まで暗闇でよく見えなかったお互いの姿が良く見える。

真っ黒だ…。

僕の白い髪とは違う。

黒い黒い漆黒の髪。

僕の瞳とは違う。

何処までも黒い飲み込まれそうな程の漆黒の瞳。

素直に綺麗だと思った。

「…お兄さんのお名前は?」

気が付いたらそう聞いていた。

「テメェなんかに名乗る名はねえ!」

その言葉にカチンときた。

「普通名乗られたら名乗り返すのが常識じゃないんですか?」

「ノアに名乗る名なんて生憎持ち合わせていないんでな」

その言いぐさが気に入らない。

折角綺麗だって思ったのに損した!

瞳の色とか髪の色とか凄く綺麗なのに。

でもあのお兄さんはムカつく!

「はぁ〜」

思わずため息が出た。

綺麗なのに勿体ない。

「無駄話も終わりにするぞ。来ないつもりならこちらから行く!」

「いいですよ。僕もさっさと帰りたいですし」

戦闘が始まるまさにその時だった。

アレンの目がいきなり何かを捕らえた。

アクマが近くにいる。

「ねぇ、お兄さん。こんなところでのんびりしていていいの?」

「………あ?」

「クスクス、早くしないとアクマに取られてしまいますよ?」

アレンはさも可笑しげに言った。

「大事な大事な…イノセンス」

「テメェッ…!」

青年は辺りを急いで見回す。

するとそんなに遠くない位置で土煙が舞っていた。

「テメェまさか囮か?」

「まさか。僕がアクマの囮なわけないでしょう?偶然ですよ、偶然」

「………チッ!」

青年はもうアレンなど構っていないかの様に走り出す。

「あ〜あ、あんなに簡単に後ろを見せたらいつかやられちゃうよ?」

クスクス、聞こえていないと分かっていて言ってみる。

「アレン様」

その時アレンの背後に気配が現れた。

「…なんですか?」

アレンは振り返らず声だけを向ける。

「千年公からの伝言ですか?」

「はい。イノセンスは取りあえずアクマに任せて一端ご帰還をとのことです」

「えっ?でもこのお仕事は…」

「…それはもういいそうです」

「…分かりました。場所は?」

「ここよりも東の町にあるイノセンスを確保して頂きたいそうです」

「了解しました。移動の方はどうしますか?」

「一端ご帰還されてロード様のお力をお使いになると伺いました」

「そうですか」

「ではお早く」

「すぐ行きます。先に行ってて下さい」

「はっ」

気配が消えるとアレンは外を見た。

戦闘が始まったのだろう。

建物が悲鳴を上げている。

あの青年は死んではいないだろうか。

また逢えたらいいな…なんてガラにもないことを考えて。

「また逢いましょう」

アレンは扉へと消えていく。

今度逢えたら

その時は…

僕の名前を教えてあげますよ。


















私凄いことを発見しました。 …実はこれ前に書いたの半年以上前だということです! わぁ、たいへんだぁ。 それはさておきこれから徐々に接触していきます。 謎も明らかになっていきます。