僕の気持ちに早く気づいて下さい。
















陽光の雫






















日差しがとても暖かい。

アレンは部屋を暖める柔らかい光に目を覚ました。

今日は任務が珍しくない日。

こんな日はゆっくりするに限る。

ゆっくりとベットから起きあがるとそれに気づいたのかティムキャンピーが寄ってきた。

「おはよう」

そう微笑めばティムキャンピーは嬉しそうに飛び回る。

「今日は任務もないし少しお茶でもしようか?」

言葉が分かるのかティムキャンピーは少し急かすようにアレンを引っ張る。

それを軽く制すとアレンは早々と着替え始めた。

アレンは女の子である。

別にそれを隠したこともないし隠そうとも思ってはいない。

でもなぜかこの教団では男の子の様に接せられている様な気がする。

まぁ大して気にすることでもないし今まで一度も聞かれたことはないので当然知っているものと思っていた。

唯一困ったことと言えばここには女性が少ないということである。

何か話すにも人数が限られてくる。

大抵はリナリーがいるのでそこまで困りはしないが。

ただ。

リナリーさえ実は気づいていない気がするのが恐ろしい。

別に彼女が鈍い訳ではない。

アレンはどういう訳かやたらに紳士なのである。

そこらにいる男よりもよっぽどの。

女性には常に優しくあるべし。

女性は砂糖菓子で出来ている。

なんて今時どの程度の男が実践しているかも分からないことをアレンは律儀に守っている。

あの師といてこの考えが変わらなかったのが不思議である。

いやむしろいたからこそなのかもしれない。

「僕何食べようかな」

朝食は一日の元気の基である。

そうでなくても寄生型のアレンは消費が激しい。

一食抜いたらそれこそ死ぬかもしれない。

なんて少々大げさだが実際倒れる位はしそうである。

「よしっ!」

身支度を整え後は食堂に行くのみである。

「おいでティム」

それにティムはパタパタと喜んで飛んでいく。






























「あっ、おはようアレン君」

「おはようございますリナリー」

「今日もまた凄い量ね」

「そんなことないですよ。ジェリーさんの料理が美味しくて美味しくて」

料理を一杯に頬張りながら嬉しそうに笑うアレンに思わず笑みが零れる。

アレンはリナリーにとって可愛い妹分なのだ。

今まではリナリーがこの教団の中では一番の年下だった。

だから彼女が来て嬉しかったのだ。

実質教団内で最年少者はアレンである。

だからどうしても構ってしまうのだ。

アレンもアレンで懐くのでリナリーはそれが可愛くてたまらない。

「ねぇアレン君」

「はい」

「今日は任務ないんでしょう?」

「はい」

「だったらちょっと付き合ってくれない?」

「えっ………」

その数十分後連れて行かれたのは彼女の部屋だった。

そこは如何にも女の子の部屋といった感じでとても可愛いらしかった。

「いつきてもリナリーの部屋は可愛いですね」

「ありがとう。良かったらアレン君も今度買い物に行く?」

「え?」

「アレン君ここに来てからまだ任務以外では一度も街に行ってないでしょう?」

「え、えぇまぁ」

「折角だから今度任務ない時にでも一緒に行きましょうよ!」

「えっ、でもリナリー迷惑じゃ………」

「そんなことありえないわ!」

「ほ、本当に………?」

「もちろん!」

当然とばかりに言った彼女に嬉しさがこみ上げる。

「ありがとうございます!」

「いいえ。あっ、それで今日呼んだ理由なんだけど」

そう言ってリナリーが取り出したのは淡い白色をした布だった。

いや布ではない。

よく見ればそれは洋服であった。

可愛らしいそれは女の子が好んで着そうな物だ。

それはいいが彼女が呼んだ理由が分からない。

「えっと、これは?」

「これね今度教団でやるパーティの時に着ようと思うの」

「あぁ」

そういえばコムイさんがやるって言ってたっけ。

可愛らしいその服はリナリーにとてもよく似合っている。

「とても似合ってます。可愛いです」

「ありがとう。それでお願いがあるんだけど………」

「何ですか?」

きっとリナリーはこの服の感想が聞きたかったんだ。

そう理解していたアレンは思わぬ発言を聞くことになる。

「私とお揃いでこれ着てくれない?」

「………」

今リナリーは何て?

一緒?

一緒って事はこれスカートだよね。

どう見たって女物だよね。

そりゃ僕は女の子なんだから着たって何らおかしくはない。

だけど………。

「僕が女の子って知ってたんですか」

「当たり前じゃない!何言ってるのアレン君たら」

いやそりゃ知ってててもおかしくはないんだろうけど気づいてないと思っていたから。

ちょっとビックリしてしまった。

「第一アレン君気づいてないなんて相当の鈍感かお馬鹿さんよ?」

「えっ、じゃあ他の人は?」

「もちろん兄さんは気づいているわ。それに多分ラビだって気づいてると思うわ」

「そうだったんですか………」

「神田だって気づいてるんじゃないかしら?あれで結構鋭いところあるし」

「はぁ………」

素直に驚いてしまった。

まさかそんなに気づかれていたなんて。

いや隠してた訳じゃないから別にいいんだけど。

「それにしてもアレン君こそどうして気づかれてないなんて思ったの?」

「だって僕こんなですし聞かれなかったですし。皆さんの反応とか男の子に接してる様でしたから」

てっきり男と思われていると思ってました。

腕はこんなだからいつもスーツを着ている。

可愛い気のある服なんて修行の邪魔になるだけだから着たことないし。

胸はまだ小さい。

発育途中なのもある。

しかしアレンの場合は修行をする上で大して必要でもないし邪魔になるしで好都合と考えていた。

だからサラシを巻いていた。

前は何も着けていなかったのだが師匠に言われて着けた。

第一あんな師匠の元で生活してまともに女の子の感覚が育つ訳がない。

そんなこんなでアレンは自分が女の子なんだという自覚に欠けていた。

「それに旅をするには男の方が良かったですから。だからここに来てからも聞かれないしいいかなぁって」

「でもアレン君それってちょっと無防備じゃない?」

「でもお風呂はちゃんと女湯に入りましたよ」

「そうじゃなくて」

「それに僕みたいなの襲う物好きなんていませんって」

「何言ってるの!」

アレンの自覚が薄いとは思っていたがここまでとは思ってなかった。

こんなに可愛いのにどうしてそう言うことが言えるの!

アレン君は自覚がなさ過ぎだわ!

こんなんじゃいつ不埒な輩に捕まるか分からないわ!

「いい?アレン君。アレン君は十分に可愛いわ。それこそ襲っちゃいたい位に!」

「へっ?」

「アレン君が思ってる以上に周りは君を狙ってるの!分かってた?」

「そんなリナリー、だからそんな物好きな人………」

「いるの!アレン君が気づかないだけで!それにその輩が物好きなら大半の人間は物好きになるわよ!」

「そんな大げさな………」

「大げさなんかじゃないわ!」

「え、えっと………」

「だからもう少し女の子なんだっていう自覚を持って!」

「で、でも」

「いい?アレン君、この教団内の女性団員の数知ってる?」

「し、知らないです」

「男の団員に比べたらほとんど女性はこの教団にはいないの」

「そういえば………」

教団内で女性なんて滅多に見かけないなぁ。

「それにねエクソシストの女性はもっと少ないの。今いる女性はアレン君と私とあと元帥の方だけなの」

「それしかいないんですか?!」

「そう。だから余計に気を付けて欲しいのよ。この教団内だって絶対に安全とは言い切れないの」

「それはどういう………」

「ここって閉鎖された空間でしょう?だから何が起こっても不思議じゃないのよ。分かるでしょう?」

優しく言われて思い出す。

そういえば旅をしている時に男の子だと偽っていたのもその為だった。

小さい子供、それも女の子なんて野宿なんてしてたら攫って下さいと言っている様なものだ。

だからマナは僕に男の子の恰好をさせた。

一座と旅している時だって安全の為にと男の子の恰好でいた。

それと同じ事がこの教団でも言える。

そういうことなのだろうか?

「………ありがとうリナリー。少し気を付けます」

「分かってくれて良かったわ」

そう言ってどちらともなく笑い出す。

女の子特有の空間だ。

とても安らげる。

「じゃあ早速着てみてくれない?こっちがアレン君用」

「えっ、もう用意してあるんですか?」

「もちろん!滅多にこんな恰好しないでしょう?折角だから張り切ってみたの!」

「凄いですね………」

「あっ、これもちろんアレン君にあげるから」

サラリと言われて思わず流しそうになる。

「へっ、や、えっ?く、くれるってこんな高そうな物!」

「いいから!やりたくてやってるの!ね、受け取って?」

そう言われては貰えませんとも言えない。

リナリーとしては可愛い妹分なのだ。

せめてこれ位のことはしたい。

「じゃ、じゃあ」

手に取ってみる。

とても良い品なのだろう。

とても手触りが良い。

それに色も淡い白がとても綺麗で思わず見入ってしまう。

リナリーはそれを嬉しそうに眺めると早速着替えに入った。

リナリーの服はアレンとは色違いの淡い紫であった。

落ち着いたそれはリナリーにとても良く似合っている。

胸もとはシンプルだが軽く刺繍が華美ではない程度に施されていた。

肩は大きく開いている。

だがアレンの腕を気遣ってか腕にはウォーマーが付いていた。

服のサイドにはリボンが付いておりそれを締めると引き締まった感じになる。

スカートはフリルのふんだんに付いたものである。

裾に向かって広がっていき先にもフリルが沢山あしらってあった。

スカートの裾は後ろが長く前にいくにつれて短くなるものでドレスを連想させる。

仕上げにストールを羽織ればパーティ衣装の完成である。

「こういうの初めて着ました」

「アレン君可愛い!」

「あ、ありがとうございます。リナリーもとても可愛いです!」

「ありがとう!」

そう言って微笑み会う少女2人の周りにだけ花が舞っている様な気さえする。

アレンはどちらかというと可愛い系である。

対するリナリーはどこか綺麗な感じがある。

同じ服を着てここまで印象が違うものなんだとアレンは半ば驚いていた。

その時である。

コンコン

「はい?」

「リナリー今いいさ?」

「ラビ?ちょっと待って」

そう言うとリナリーは脱いだ服を素早く片づけた。

「いいわよ」

「えっ、ちょっとリナリー僕まだ着替えてなっ………!」

「折角だから見て貰いましょう?」

ねぇ。

そう言われては何故か逆らってはいけないような気がした。

「お邪魔するさ〜」

「ちっ」

ん、今なんかちって聞こえた様な………。

「あら、神田も一緒だったの」

「………っ?!」

な、なんでこんな時に神田が来るの?!

今一番会いたくなかったのに!

こんな恰好見られたら何言われるか分かったもんじゃないよ!!!

アレンがグルグルとそんなことを考えていると不意に扉からラビの驚きが聞こえた。

「おっ、リナリーめっちゃ可愛いさ!どうしたんさそれ?」

「ありがとう。今度のパーティ用にと思って」

「すっげー似合ってるさ!あれそっちにいるのは」

ビクッ

「もうアレン君そんな隅にいないでこっち来なよ」

「アレン?!マジで?!」

「そ、そんなに見ないで下さい………」

ラビにジッと凝視されて居たたまれなくなる。

やっぱり似合わないよね………。

だがラビから発せられたのは見事にそれを裏切るものだった。

「アレン可愛いさ〜!」

「えっ………?」

「やっぱりちゃんとしたの着れば女の子なんさね」

しみじみと言うラビ。

だがそれよりも。

可愛いって、言ってくれた?

こんな僕でも?

耳まで赤くなるのが分かる。

いつも気に掛けてくれるお兄さんみたいなラビの言葉は別の意味でも嬉しかった。

「ほらユウも何か言うさ!」

「あぁ?!」

如何にも面倒くさ気に見てくる。

「はっ」

あっ、なんかその笑い方すっごく馬鹿にされた気分!

似合わないなんて言われるよりは数段良いけど。

神田にそんなこと言われたらパーティで着れなくなる。

「ちょっとユウそんなん感想になってないさ」

「うるせえ!」

「何〜?アレンに見とれちゃったとか〜?」

ラビがからかうように言えば神田は今にも斬りかかりそうな位に叫んだ。

「こんな貧乳モヤシに誰が見とれるか!」

「ひ、ひんにゅっ………!!!」

ひ、人が気にしていることを!!!

「神田の馬鹿!」

「あぁ?!なんだとこのモヤシ!」

「セクハラです!」

「事実を言ったまでだろうが!」

「なっ!!!」

先ほどとは違った意味で真っ赤になる。

するとラビが見かねたのかコソッと耳打ちしてきた。

「ユウは素直じゃないんさ。見てみ?耳が真っ赤さ」

言われてみてみると確かに神田の耳は今までにないくらい真っ赤で。

なぜだかそれを見たら怒る気も失せてしまった。

むしろ可笑しくさえなってくる。

神田はそれに気づいたのかドカドカと怒って行ってしまった。

それを見てまた可笑しくなって今度は笑ってしまった。

「神田のばぁか」

別に可愛いって言ってもらわなくたっていい。

言ってくれたらそれは嬉しいけれど。

似合ってるなんて言ってもらえるとは思ってない。

ただせめて少しでも言葉が欲しかった。

「少しくらい素直になったって良いじゃないですか」

君が照れ屋なのは知ってるよ。

不器用なんだって事も分かってる。

だから。

多くの言葉は望まない。

ただ一言。

それ位のワガママくらい。

許してくれたって良いよね。



































私やりたかったことが出来ました。 珍しくシリーズモノじゃないのです。 アレン女体化です。 実は普通にこういうのは初めてです。 あるのは年齢違います。 だからエクソシストのがやりたかった。 神アレです。 分かりにくいがそうなんです。 そしてさり気にラビリナです。 またやりたいです。