神話







『翼を持ったイカロスは太陽に近づきすぎて地に落とされた』

昔そんな話をマナから聞いた。

あの頃はイカロスは何で約束を守らなかったのだろうかと、

不思議で仕方がなかった。





















「っくしゅんっ!」

列車内に誰かのくしゃみが響いた。

「くっしゅん!」

1回 2回

「ひっくっしゅんっ!!」

「アレン君、大丈夫?」

あまりにも何度もくしゃみをするものだから、ちょっと心配になってくる。

「あっ、はい、すみません」

「お前、風邪引いてんじゃないの?」

「え、それはないと思うんですが…」

そう言いながらも、アレンは鼻を啜っていた。

あまり説得力が無い。

移動中とはいえ何日も列車の中での生活をしていれば、誰だって体調を崩してもおかしくはない。

それにアレンはリナリーやラビと違って、まだエクソシストになって日が浅い。

いくら(あの)クロス元帥のもとで修行していたとはいえ、アレンは普通の人間なのだ。

風邪を引いたって、なんら不思議はない。

「アレン君、このところ体の調子でおかしいところはない?」

「えっ、特にないですよ?」

おかしなものは食べてないですし…、と言うがあまり体調が良い様にも見えない。

「でもこの間お前びしょ濡れのままそこで居眠りしてなかった?」

「えっ?そうでしたっけ?」

「そうさ。通り雨に降られて、確か服乾かす前にアレンが寝ちまったんさ」

「本当なの?」

「えっ〜と…」

必死に思い出してみる。

「………っあ〜!そういえばそうでしたね…。でもあれ位じゃ風邪は引かないですよ」

「お前、あれで風邪引かなかったらある意味すげぇさ…」

「そうですか?」

「それで、その後アレン君何かおかしいなと思ったことはない?」

「えっ?別に何ともありませんでしたよ」

「ホントに?」

「ただ、少し目眩がしたり、咳が出たり、あとくしゃみが出るくらいです」

「アレン君…」

「そういうのを世間一般には風邪って言うんさ…」

「えっ?!これ位どうってことありませんよ」

アレンは一向に風邪だということを認める気は無いらしい。

「っくっしゅ!!」

それでも心なしかアレンの顔色が青い。

「アレン君」

名を呼ばれてリナリーの方を向けば、目の前に彼女の顔。

「リッ、リナリーッ?!」

か、顔が近いですっ///!!!

「黙って」

リナリーはアレンの額に額をくっつけている。

簡単に言えば熱を計っているのだ。

母が子の熱を計る様に…。

ラビはといえばアレンの慌て様が面白いのか、クスクス隣で笑っている。

いつもだったら一にらみでも利かせるところだが、生憎今はそれどころではない。

「……やっぱり熱があるじゃない!!」

「えっ?」

「しかも結構熱が高いわよ!……アレン君、よく今まで平気でいられたわね……」

「えっと…」

「マジかよ?おいアレン、こっちむいてみ」

「へ?」

と今度は額に暖かいものを感じた。

ラビが熱を計る為にアレンの額に手を当てていた。

何だか、手のひらの暖かさが心地よかった。

「…………」

「あっ〜!ホントに熱高ェさっ!アレン、お前熱上がってきてない?」

「そ、そうですか…?」

自分で熱を計ってみようとする。しかし、どうも熱があるようには思えない。

「別に平熱じゃないですか?」

「バッカ、お前は熱があるからそう思うんさ」

「そうよ。ねぇアレン君、今日はおとなしく寝てて?」

「えっ?!そう言うわけにはいきませんよっ!!いつ敵が襲ってくるかも分からないのに…」

「あっ〜もっ〜!!だからこそっ!だからこそ寝とけって言ってんのっ!」

「…………えっ?」

「こんな状態で戦われてもやられて終わりだっての!言ってる事分かる?」

「…………はい……」

確かに、こんな状態では戦うことは到底無理である。

万が一戦えたとしても、それは足手まとい以外の何ものでもない。

今の自分は、…単なるお荷物…。

「…すみません…」

途端シュン、としてしまったアレンに思わず苦笑いになる。

「そう思うんだったら、おとなしく寝てるさ」

「そうよ、今は敵のことは考えないで?体を治すことだけを考えて」

「……でもっ」

「でもじゃないっ。いいからおとなしく寝るっ!」

そう言ってラビはアレンの頭を引き寄せた。

「ほら、肩貸してやるさ」

「えっ?あ、あのっ…」

「いいからいいから」

「ラビの言う通りよ、ね?」

「…………」

なぜだか、この2人に言われると段々逆らえなくなってきた。

外は晴れ渡っていて、窓から吹き込む風も気持ちいい。

それに、やはり人の体温というのは暖かいもので…。

(なんだか、…どうでもよくなってきちゃった…)

段々アレンは暖かさにぼ〜、となってきた。

「…………はい………」

そう言うと、アレンは眠りについてしまった。

ラビとリナリーはそれを見て思わず微笑んだ。

























太陽に近づきすぎたイカロスは翼を溶かされて地に落ちた











もしも僕の背中に翼があって










この暖かい場所が太陽だとしたら











どうか










どうか 少しでもいい











この翼が溶けないで欲しいって











…そう思うんだ







初ッ!Dグレ小説ッ!! アレ+リナ+ラビの3人組〜v これは大体5巻の師匠捜しの列車の中とでも考えて下さい。 この3人好き〜vってか、10代4人組が好きっv いいよね、この4人…v