一体何でこんな事になったんだろう?















Little!! 1
















事の起こりは、いつものように父から受けた指令だった。

「今回の指令は、え〜っと…"流れに逆らうものを見つけ出し 解決まで導け"」

「あいっ変わらず、訳わかんねぇ〜」

「流れに逆らうもの…か。流れって川とか、水のことを指しているのか?」

「川?じゃあ早速行こうぜ!」

「行くって、どこに?」

「何言ってんだよ、川に決まってんじゃん」

「は?なんで?」

「は?なんでって、焔兄が言ったんじゃんか」

「はぁ〜、お前なぁ、それは例えばの話だよ…。まだ何にもわかってないんだから、ヘタに動く…」

「何もわかってないから行くんだろ?ほら、焔兄さっさと行こうぜ!」

「ちょっ、陣っ!!!」

陣は焔の制止の声を聞く前に部屋を飛び出して行った。

「あぁーもうっ!こういう時に限って早いんだから…!」

そんな焔の思いも知らず、陣は既に家の外で宙と早く、早く、と急かしている。

焔は溜息を吐きながらも、陣の後を追いかけて外に出て行った。








































行く道々でもう既に秋の色が見え隠れしている。

まだ暑いとはいえ、もう夏は大分終わりに近づいていっている。

見上げた空は綺麗に晴れていて、でもどことなく夏の空じゃない。

秋がまざった少し寂しさを感じる空だ。

そんなことを考えていると、ふと、隣の陣が口を開いた。

「なぁ焔兄、今回の凶ってさ、一体どんなやつなんだろうな」

「さぁな。お前が考えもせずに飛び出していっちまうから、考えてなかった」

「な、なんだよっ!俺のせいだって言いたいのかよっ?!」

「別にぃ〜。ただ、もう少し考えてから行動しろって言ってんの」

「うぅ〜っ…」

「ほら、もうすぐ着くぞ。本当にいるかどうかは別として」

「う、うるせーなっ!!!」

そんなことを言い合っているうちに目的の川に着いた。

川辺はとても静かで、凶どころか人影すら見当たらなかった。

しかしそれは逆に不自然過ぎた。

「静か…過ぎるな………」

「あぁ………」

なんとなく嫌な予感を感じ、二人は思わず見構える。

その瞬間、水の中から何かが現れた。

「いたっ?!」

「凶だっ!!!よっしゃぁーっ!!!大当たりだぜっ!!!」

「陣、構えろっ!交渉に入るっ!」

「おっしゃっ!焔兄、凶の正体はっ?」

「今探ってる」

「早くしたほうが良さそうだぜ〜」

凶は川から飛び出した直後、一直線にこちらに向かって来た。

焔の結界でなんとか攻撃の直撃を免れたものの、そういつまでも保たないだろう。

現に今にも凶は結界を破って襲いかかってきそうなのだ。

「焔兄っ!結界のほうがヤバそうだぜっ!!!」

「わかってるっ!!!」

わかってはいるものの、なかなか凶の正体がわからず、動くことが出来ない。

下手にこちらから攻撃でもすれば、あっという間に劣勢になるのは目に見えているだろう。

どうすることも出来ずにいると、ついに凶は結界を破って襲いかかって来た。

「焔兄っ!結界がっ!!」

「わかってるっ!!今張り直すっ!!!」

「んなん待ってたらやられちまうっ!!!」

そう言うと陣は一直線に凶目がけて突っ込んで行った。

「ばっ!陣っ!止せっ!!!」

「くらえぇっ!!!」

陣が凶目がけて技を放った。

その時だった。

攻撃が当たったと思った途端、辺り一面が光に包まれた。

「陣ーーーっ!!!」







































気が付くと、辺りの光は収まっていた。

どうやら激しい光だったために気を失ったらしい。

周りを見回すとそこに凶の姿は既に無かった。

「………消えた………。いや、逃げたのか………?」

先程まで確かにいた凶は、もはや気配すら感じられなかった。

「………っ!陣っ!!!」

焔はふと思い出した。

あの光の直前に凶に突っ込んでいった弟のことを。

急いで呼びかけてみるが、返事は無い。

心配になり辺りを見回す。

すると、すぐ向こうに見覚えのあるものが転がっていた。

「陣っ!」

慌てて駆け寄ると何か違和感を感じた。

そう、陣の服はあったが、その本人がどこにも見当たらなかった。

「陣…の服だけ?!ど、どういうことだっ?!」

焔は訳がわからず、その場から動けなくなってしまった。

その時

「ぅあ〜」

どこからか妙な声がした。

「ぅう〜」

いや、声というよりは…むしろ………

「ぁうあ〜」

何か、音といったほうが近いかもしれない…。

焔は、果てしなく嫌な予感を抱えながら、恐る恐るその音のするほうの服をめくりあげた。

「!!!!!!」

「だぁっv」

そこにいたのは、どことなく見覚えのある、見た目2〜3歳位の子供。

そう、陣は凶の放った光によって、子供の姿になっていたのだった。

「………………?!」

嫌な予感的中………。

焔は金魚のように口をパクパクさせながら、それでも開いた口がふさがらない。

(だからあれほど言ったのにっ………!)

驚き半分、呆れ半分の微妙な溜息を焔は吐いた。

「あぅ〜?」

小さくなった陣は、訳がわからないといった感じだ。

「はぁ〜………」

焔は今度は深い溜息を吐いた。

「………」

じぃ〜、そんな音が似合いそうな感じで、陣は焔を見ていた。

「………なんだよ………」

またもや、深い溜息を吐いた焔だが、次の瞬間、それは見事に止まることになる。

「おにぃたん、………だぁえ?」

「………へっ?!」

陣の言葉はまるで信じられない、否、信じたくないものだった。

「だぁれ、って………。えぇぇっ!!!陣っ、覚えてないのかっ?!」

びくっ、焔の突然の大声にびっくりしたのか、陣の瞳はだんだん曇っていく。

ヤバイッ、と思った時には、時既に遅し。

「ふぇ…、びぇ〜んっ!!!」

陣は盛大に泣きはじめてしまった。

「わぁっー!!!な、泣くな!ほらっ、なっ?」

慌てたのは焔である。

小さい子供の扱い方なんて、全くもって知るはずもない。

いくら自分の弟だって、こんなに小さい時の記憶なんて曖昧で。

どうしたらいいのか本当にわからない。

とりあえず泣きやませるので精一杯だった。

「ひっく、ぅっく、お、おこやにゃい?」

「お、怒んないっ、怒ってないからっ!」

「ほ、ほんちょ…?」

「ホント、ホントッ!!!」

怒られているわけではないとわかってか、陣は途端に満面の笑顔で笑った。

これぞ、まさに子供特有の天使の微笑み。

(うっ///)

さすがの焔もこの微笑みにはやられてしまった。

「コホッ、そ、それで、あ〜…、一つ聞いても良いかな?」

焔はなるべく刺激しないように極力優しく話しかけた。

「うぅ?なぁに?」

「えっと、君の名前は?」

「じんっ!」

「じゃあ、………じ、陣…君、君の家族のお名前言える?」

な、なんか俺、馬鹿みたいだ………。

やはり、いつも呼び捨ての弟に"君"を付けるのは、違和感以外の何ものでもない。

そんなことを思いながら、質問は続いていく。

「う〜んちょねぇ、ぱぱでしょ?ままでしょ?あと…」

「あと…?」

焔の質問に考えながら答えていた陣はどことなく嬉しそうに言った。

「あとねぇ、おにいたんっ!」

「お、お兄ちゃん?」

「うんっ!じんのおにいたんっ!!」

「そ、そのお兄ちゃんのお名前言える?」

「いえうよっ!えっとねぇ、えんくんっていうんやよっ!」

「へ、へ〜…、そう………」

なんとなく複雑な心境になりながらも、そのおかげでわかったことがある。

ひとつ、陣は凶の光を浴びて小さくなったらしい。

もうひとつ、小さくなったのは体だけじゃないらしい。

最後に、どうやら陣の記憶は3歳頃に戻ってしまっているらしい。

結論、早く帰って父さんに相談しよう。

「ねぇ、陣…君、君のお家、どこだかわかる?」

「えっ!」

「え………?」

陣の顔が突然曇る。

あっ、ものすご〜く、嫌な予感………。

そう思う間もなく、陣はまたもや盛大に泣き出した。

「ぴぇ〜んっ!お、おうちわかんらいよぉっ!!!」

「あぁ〜っ!やっぱり〜………!!!」

「びぇ〜んっ!ぱぱぁっ、ままぁっ、お、おにいたぁんっ!!!」

「あぁ〜っ!!!な、泣かないでっ!!!」

「みぇ〜んっ!!!」

「お、俺が家に連れてってあげるからっ!!!」

ぴたっ

「ほ、ほんちょおに………?」

まだ少し泣き顔の陣。

ここでまた何か下手なことを言ったら最後、再び盛大に泣き出すこと受けあいだろう。

「ホント、ホントッ!だから、ねっ?」

出来るだけ優しい笑顔で言ってみる。

まず間違いなく引きつっているだろうが。

それでも陣は安心したのか、また笑顔で笑った。

「うんっ!」

(はぁ〜、つ、疲れる〜っ!!!)

そんな焔の横顔を不思議そうに見つめる陣。

「………?どうかした?」

「うっ?あのねぇ、あのねぇ、じん、わからにゃいことがあうの」

「………?」

「おにぃたんはだあえ?」

「えっ………?」

「じん、おにぃたんのおなまえきいてにゃい」

「あっ………!」

言われて思い出した。

そういえば、聞くのに精一杯で、自分のことをどう説明するか考えていなかった。

ここは素直に名乗るべきか、それとも、言わないべきか………。

(ど、どうしよう………)

そんなことを考えてるうちも陣が不思議そうな顔で見つめいる。

「おにぃたん?」

「えっ!あぁ〜………、その………」

もう、こうなったらっ………。

「俺はね、焔って言うの」

「えん?」

「そう」

思い切って言ったはいいものの、当の陣は焔の名前を繰り返し連呼している。

何をしているのかと思い、顔を覗き込む。

途端、陣は嬉しそうに喋り出した。

「しゅご〜いっ!じんのおにいたんとおんなじなまえら〜っ!」

がくっ

(そうきたか………)

焔の心境など知るよしもない陣は、なおも嬉しそうに続ける。

「あのねぇっ、あのねぇっ、じんのおにいたんねぇ、しゅごいんらよっ!」

「………?」

「おにいたんねぇ、がんばってしゅぎょーしてるんらよっ!」

「あぁ〜………」

そいえば、この頃から父さんに修行させられてたっけ………。

「いっちゅもがんばっててねぇ、それでねぇ、とってもやしゃしいんらよっ!」

「や、優しい…?」

「うんっ!じんねぇっ、じんねぇっ!」

陣は先程とは比べ物にならない位の笑顔で笑った。

その顔は、とても嬉しそうで…、そして同時に、とても楽しそうだ。

「おにいたん、だいしゅきなのっv」

「………っ///」

だんだんと頬が火照っていくのが、自分でもわかる。

たぶん、面と向かって言われたためだろう。

妙に気恥ずかしい。

ただ、嫌な気分ではない。

「おにぃたん?」

「へっ?!あっ、あぁっ!!な、なんでもないっ!!!」

「???」

こんなことをやりながら、なんとか帰路に着くことが出来そうだった。

しかし、もうひとつ問題が残った。

「陣の服…、どうしよう…」

そう、陣は体が小さくなったために、服がかなりブカブカなのだ。

今は、Tシャツをかぶっているような状態で。

さすがにこのままでは、家まで帰ることが出来ない。

どうしたものかと少し考えたが、意外に早く結論が出た。

「陣…君、こっちおいで」

「うっ?」

少ししか離れていないため、陣はTシャツを引きずるようにして2,3歩近づいた。

「あぅっ?」

急に浮遊感を感じたと思った次の瞬間には、陣は既に焔の腕の中にいた。

「おにぃたん?」

陣はいまいち自分の状況がわかっていないらしく、キョトンとしている。

(よく考えたら、こうした方が早いよな)

焔は、陣をTシャツにくるんで、ズボンは持って帰ることにした。

こうすれば帰りも早く帰れるし、何より、服の心配をしなくていい。

それに、下手に人に会わないようにすれば、俺が何を抱いているかなんて

ぱっと見た位じゃわからないはずだ。

そう考えての行動なのだが、陣としてはただ単に急にだっこされたのだ。

訳がわからなくても当然だ。

「あっ、もしかして…だっこ嫌?」

恐る恐る聞いてみると、陣は勢いよく首を横に振った。

「ううんっ!だっこしゅきっ〜v」

そう言って、焔にぎゅうっと抱きついた。

「えへへ〜v」

自然と焔は陣の頭を軽く撫でていた。

それが嬉しかったのか、陣は嬉しそうに言った。

「おにぃたん、じんのおにいたんとおんなじにおいがしゅりゅ〜v」

「えっ………!」

もしかして、気付いたのか?

「だかりゃねぇ、おにぃたんもしゅき〜v」

「………あ、あはは………」

気付くわけないか………。

そんな焔の心は、露知らず。

陣は嬉しそうに焔に抱きついている。

「えへへ〜v」

焔は溜息を吐きたかったが、止めた。

陣の嬉しそうな顔を見たら、とてもじゃないが、溜息なんて吐けなかった。

(まぁ、今はいっか。帰ってから考えよう)

さて、この後、どうしようか………。

そんな不安を抱きながら、焔と陣はようやく帰路に着いた。






























こんにちはっ、梨湖ですっv 今回、この小説はすごいですっ!!! な、なんと、 相互記念小説なのに、1話じゃ収まりきらないので、なぜか、(差し上げる小説なのにっ!!!) 他サイト様での連載状態になってしまうブツなのですっ!!!(説明長ッ………!!!) 結構(いや、かなり)、楽しませて書かせてもらってマスv ところどころ陣のセリフがわかりにくいかとは思いますが、 そこはなんとかっ………(←無理言うなっ!) とにかく、楽しんで頂けたなら幸いですっv