宙の陣観察日記



これは、陣の父さんから言われて

つけることになった陣の観察記録だ。

観察するのはもちろんおれ、宙。

父さんが言うには、

「常日頃から相手をよく見るのは大事なことだ。

 お前達も等軍の持ち凶なら、パートナーのことを

 もっとよく知る必要がある。

 心して行うように」

だそうだ。………っていうかおれは陣のことよく知ってるぞ?

何を観察すればいいんだ?

あっ、そういえば、古雅も同じこと出されてたな。

よし、聞いてみよう!
















あっ、古雅がいた!おーい、古雅ー!

あっ、宙。

なぁなぁさっきのやつって一体何すればいいんだ?

さっきのって…パートナー観察日記?

そうそう、それだぜ!

ん〜、ぼくはね、とりあえず焔に見つからないように観察しようと思うんだ。

なんで???

だって見つかるといつもと違う焔が見れないかなぁと思って。

???………よし!わかった!おれも陣に見つからないようにするぜ!!

(何がわかったなんだろう?)じゃあ、ぼくもう行くね。

おう、ありがとだぜっ!………よーし、じゃあおれもばれないように観察するぜ!





























観察開始!

○月×日 晴れ

今日は学校がある日なので、陣は学校に行くぜ。

でも、昨日の凶退治のせいでねむいらしい………。

あっ、焔にひっぱられて行ったぜ。










○月△日 晴れ

今日も学校の日。

今日は陣はしっかり起きている。

あれっ、誰かがチャイム鳴らしてるぜ。

なんか陣を呼んでるっぽい。

陣様ーって、この声聞いたことあるぜ。

あっ、なんか陣嫌そうな顔してる?

あっ、そっか、あれは奏の声だぜ!

そういえば最近よく奏を見るぜ。

なんでだ?



























○月○日 くもり

今日は寝坊したぜ…。

起きたら、もう陣達はいなかったぜ…。

どうしようだぜ!

外は雨がふってきたみたいだ。

んっ?なんか陣の母さんが呼んでる?

行ってみよう。

…傘?陣が忘れてったらしいぜ。

おれが届ければいいのか?

楽勝だぜ!

…あっ、これで陣を観察できるぜ!

やったぜ!














よし!陣の学校に着いたぜ!

陣はどこだぜ?

陣ー?陣ー?どこだぜー???

………ここって広すぎだぜ………

あっ、焔がいた!おーい、焔ー!!

気がついたみたいだぜ、こっちに来る。

焔がおれがここにいること、なんでか不思議がってるぜ。

おれが陣の傘を届けに来たんだぜ!って言ったら、

「あの、バカ………、あれ程忘れるなって言ったのに。

 サンキュー宙、これ、あとは俺が届けておくよ」

って言って傘を持っていったぜ。

よかったぜ!

………あっ、でも陣観察しなきゃいけないんだったぜ!

どうしよう!すっかり忘れてたぜ!





















しょうがないから学校の中うろうろしてたら、

あっ、陣がいたぜ!

ラッキーだぜ!

じー…

……そいえば古雅が見つからないようにって言ってたぜ。

あ、危なかったぜ!

よ、よーし、見つからないように観察するぜ!











3時間目

陣は授業中ほとんど寝ていた。

でも、よく見ると周りもいっぱい寝てるぜ。

そういえば最近あったかいからなぁ。

…おれも眠くなってきたぜ…。




4時間目

陣が起きたみたいだぜ。

なんかスッキリした顔してるぜ。

でも、今度はなんか書いてるぜ。

なに書いてるんだろう?

"先生のヅラ、なんかずれてねぇ?"

あっ、今の手紙がクラス中にまわってる。

あっ、みんないっぺんに噴き出した。

陣も笑いを我慢してるみたいだぜ。

でも、先生は不思議そうな顔してるぜ…。




給食

みんな同じものを食べてるぜ。

陣なんかすごくおいしそうに食べてるぜ。

おれも食べたくなってきたぜ………。





昼休み

陣は一番最初に外に出て行ったぜ。

友達とドッチボールしてるぜ。

………あれ?なんか陣の顔がいつもと違う?

なんて言うか、楽しそうだぜ?

でも、陣は家でもいつも楽しそうだぜ。

なんだろう?なんかが違う…?

友達と一緒の時の顔とおれと一緒の時の顔、

なにが違うんだろう?






5時間目

今度こそ真面目に授業受けてるぜ。

今は"ずこう"ってやつらしいぜ。

なんか作ってるみたいだぜ。







帰り

今日はこれで学校は終わりらしい。

陣は焔の教室まで走って行ったぜ。

そういえば誰かが陣のこと、お兄ちゃん子だって言ってたぜ。

お兄ちゃん子ってこういうことなのか?

そんなことを考えてたら、

「あっれー?宙じゃん。どうしたんだよ、こんなとこで」

「バッカ、お前に傘届けてくれたの宙なんだぞ」

「えぇー!そうなのかよ!サンキュー、宙!」

「まぁ、結局雨止んじゃったけどな」

なんてこと言ってるけど、おれはそれどころじゃないんだぜ!

陣に見つかっちゃたぜ!

ど、どうしよう!確か陣には見つかっちゃいけないはずだぜ!

………と、とりあえず………、に、逃げるぜ!!!




















































お、思わず逃げたけど、急に雨が降ってきたぜ。

雨宿りをしたほうが良さそうだぜ。

…そいえば、なんでさっき陣の顔が違って見えたんだ?

いつもとなにが違ったんだろう?

うぅ〜ん、………わかんねぇぜ!

なんてことを考えてたら、またまた聞き覚えのある声が………

「あっ、宙!こんなとこにいた!

 どうしたんだよ、いきなり飛んでっちまって」

い、言えるわけないぜ!

「あっ、それよりもさー、傘サンキュな!急に降ってきてびびったぜー」

あれ?この顔は知ってる陣の顔だぜ…。

嬉しそうに笑ってるぜ。

でも、じゃあやっぱりさっきの顔となにが違うんだ?

同じ笑ってる顔なのに…。

「あっ、そうだ!宙見てみろよ。今日コレ図工の時間に作ったんだ!」

ずこう?ずこうってあれか?なに作ってたんだぜ?

陣の手の中を覗くと、そこにあったのは………おれ?

「今日さ、粘土で作ったんだっ。どうだ、上手いだろ!」

陣が自信満々に笑ってるぜ。

でも、…なんかおれもうれしいぜ!

ありがとだぜ、陣っ!!!





































まとめ

今日のことを父さんに話したら、

「陣の顔が家とでは違う?

 それはそうだろう、人の顔、というか表情だな。

 それは感情の表れだ。

 感情は人に対してそれぞれ違ってくる。

 だから、人に対しての表情も変わってくる。

 つまり陣がお前に見せる表情と、友達に対するそれは、当然違ってくる。

 だが、それが当たり前なんだ。

 そして、そのどちらも陣なんだ」

そう言っていた。

うぅ〜ん、………よくわかんないぜ。

………でも、なんとなく分かったことがあるぜ。

それは、おれはまだまだ陣のこと知らないんだなってこと。

生まれた時から一緒にいて、

結構知ってるつもりだったけど、

まだ知らないことの方がいっぱいいっぱいあるんじゃないかって、

今日の陣を見て、そう思ったんだぜ。

………あっ!

父さんが最初に言ってたことって、

もしかして、こういうこと?

これって、これからも続けたほうがいいのかな?

…でもとりあえず、

今日でなんか知らない陣を見れたから、

観察日記は大成功だぜ!








































後日談

あの後、おれの観察日記の報告で、

陣は授業中のことがばれて、父さんにこっぴどく叱られていた。

焔に助けを求めていたみたいだけど、

「この際いい機会だから、たっぷりと叱られてこい」

と、サラッと言ってあっちの方へ行ってしまった。

「そんなぁー!あっ、宙っ!助けてくれよー!!!」

「こら!陣、聞いているのか!!!」

「は、はい!ぅわーん、焔兄ーーー!!!」

これって、もしかしなくてもおれのせいか?

………おれも、今のうちに逃げるぜ!






















はい!ちょっと異色の宙語りでした!! これを書くにあたって、一番悩んだこと。 それは………、 宙&古雅の一人称&しゃべり方がよくわからんっ!!! ということでした………。 でも、この話ってラグエンの小説で一番最初に考えてたものなんだよね…。 ただ、最初っからこんな小説ってどうよ? と思い今まで出してませんでした。 でもでも、やっぱりどうしても書きたかったので、 思い切って書いちゃいましたv あはは♪ ただ今、これの古雅バージョン(?)書こうかどうか迷ってます…。