温もり 2 「なぁ、陣、昨日どこか行ったか?」 「きのおー………?」 朝起きてきて、開口一番に焔が言った。 陣はまだ寝ぼけているのか、返答が曖昧だ。 「昨日の夜だよ。いなかっただろ?」 「えぇ〜、昨日〜………」 「あー!もー!お〜き〜ろ〜!!」 「え、焔兄〜、揺らすなって〜!!」 なかなか起きない陣に痺れを切らした焔が体を揺すった。 「で、目が覚めたか」 「め、目が回る〜」 陣は朝一番に激しく揺さぶられたため、 目が覚めるどころか目を回してしまった。 「ったく、起きないからだぞ」 「焔兄のせいだろが〜!」 こんなことを繰り広げ、朝食の時間。 「で、何だよ、焔兄」 「だから、昨日の夜どっかに行ったかって聞いてんだよ」 「昨日の夜〜?別にどこにも行ってないぜ?なんでんなこと聞くんだよ」 「昨日起きたら、お前がいなかったんだよ」 「えぇ〜?」 「なになにっ、何の話?」 「こらっ、狂!口ん中の物飲みこんでからしゃべり!」 「いってー!何も殴んなくたっていいじゃんか〜!」 「こらこら、二人とも」 「杏姉の鬼〜!」 「なんやとー!待ちやこのクソガキーーー!!!」 「べーっだ!」 「いって!狂、こっち来んなー!」 「ちょっ、杏姉落ち着いてー!」 「離しや、焔!あんのクソガキいっぺんしばいたる!!!」 二人の口喧嘩はいつの間にかその場を巻き込んでしまった。 挑発した張本人の狂は逃げ回り、杏は逆上して暴れだしかけていて、 陣は狂とケンカを始めかけ、焔は杏を止めようと必死になり、 響はオロオロするばかりであった。 「こらーーー!!!あんた達っ!!!ご飯の時は静かになさーーーいーーー!!!」 ピタッ 一番最初にキレたのは母であった。 その形相はまさしく鬼の様だったとかなんとか………。 それはおいといて、とりあえずその場は収まった。 「で、何の話だっけ」 すっかり疲れきった陣は当初の話題にかえろうとした。 「あっ、あぁ。昨日お前が夜いなかったって話」 「昨日の夜?」 陣は考え込む様にう〜ん、と唸っていた。 「やっぱどこも行ってねーよ。ってゆーか、朝まで起きてねーし」 「そう、か」 「焔兄、寝惚けてたんじゃね〜?」 「お前じゃあるまいし」 「な、なんだとー!」 「あはは!」 この時、焔はたいして気にはしていなかった。 もしかしたら、自分も寝惚けていたのかも、と思っていたから。 だけど、それはその日の内に覆された。 「陣………?」 その日の夜、陣はベットから消えていた。